再就職した職場でなかなか周囲に馴染めずに、本人も上司(ほぼ年下)も、周囲の誰もが困り果てたとします。そんなときにおもむろに鞄から「私のトリセツ」を取り出して、周囲に配るのは如何でしょうか。
多分に致命傷を負いますが、上司が洒落の分かる人であるという「奇跡中の奇跡」が起きた場合にはすべてが解決するかも知れません。ねぇよ、そんなことって感じです?

私的には「自分のトリセツ」などと言うと「可愛い私を大事に扱ってね、一応、扱い方を教えておいてあげるから」といった何だか無言で机を叩きたくなる様なイメージがあるのですが、実は企業の新人研修や、心を痛めた人の回復/治療にも用いられる注目のアプローチだったのです。定められた項目に沿って、自分のことを見つめ直し、背伸びをしない等身大の自分を再発見するという訳です。それに「私のトリセツ」って随分前から、ロングランのブームだったのですね。知らなかった…
これは、再就職の現場での活用(?)に加えて、もしかしたら、すっかり心が弱っている中高年が自分を見直し、毎日をポジティブに生きるためにも有効なのかもしれません。

「私のトリセツ」にはネット上でいくつもテンプレートが公開されていて、スマホには「トリセツ作成アプリ」まであります。カップルがそれを交換し合うといった微笑ましい用途のものから、ほぼ履歴書に近いものまでがあります。特にルールや定義団体や許認可制度もない様子です。

今回のエントリでは「中高年が再就職先でなかなか馴染めないときに、コミュニケーションの改善を目的に利用する」ことを目的としているので、「コミュニケーションツール」としてのトリセツということになります。
それでは幾つかのテンプレートをつまみ食いさせてもらい、中高年Aさんのトリセツを書いてみることにします。尚、これは私のトリセツではありませんので、お会いすることがあっても、「あなたはこんな人なのね」とか「こんなことされるとうれしんでしょ」などと妙な取り扱いをすることはお控え下さい。

■私のトリセツ 名前:中高年A
<1>私の基本スペック
①基本仕様:1965年式量産型です。健康ですが、メタボと診断されています。また、血圧が高く、血糖値も高いため、ムリが効きません。書道が得意で、パソコンは苦手です。また、気配りができ、周囲を和ませることができます。
②商品特性:上司と部下の間での潤滑油として最大に機能を発揮します。但し、部下に代わって自ら手を動かすことはできません。また、稼働モードは18時になると「なんとなく会社にいるモード」から強制的に「居酒屋モード」に切り替わります。類似した商品としては「妖精」があります。

<2>私を上手にお使いいただくために
①仕事の頼み方:丁寧に根気強く、マニュアルに沿って仕事を依頼して下さい。過度にへりくだっていただく必要はありませんが、年長者に対するいたわりがあることが好ましいです。
②やる気を出させるための方法:「わかりません」とはなかなか自分からは言い出せませんので、仕事が捗っていない様子の際には「随分と頑張っているみたいですね」などと先ずは努力していることを褒めて下さい。素直になれます。これまでのサラリーマン生活で「承認要求」が肥大化しています。それから、話が長い傾向がありますが、少し聞いてもらえるとやる気がでます。「ありがとう」はやる気がでる基本アイテムです、お忘れなく。
③注意をするときの方法:「分かっていると思いますが、ここはこうした方がいいですよ」と先ず顔を立てて、それから改善の体をとってもらえると注意がすんなりと耳に入ります。「大勢の人の前」「大声」「前にも言いましたよね」には体と心が委縮してしまい、更に性能が劣化します。ご注意下さい。

<3>使用上のご注意/お手入れ方法
①性能劣化の原因:責任を重くしたり、緊張を与えるとすぐに性能が劣化します。また、長時間スイッチを入れなかった場合(年末年始、GW、夏休み)、再始動時に著しい性能劣化が見られることがあります。
②お手入れ方法:上司が不在の時間を最低でも毎日3時間は作って下さい。自己修復プログラムが組み込まれているので、勝手に免疫力が高まります。過度なメンテナンスは不要ですので、適度に「放っておいて」下さい。

<4>よくあるご質問(FAQ)
Q1.交換はできますか? A1.できません。大事に使って下さい。 
Q2.1995年式以降の新しいモデルと同時使用できますか? A2.新しいモデルの方が壊れることがありますので、ご注意下さい。
Q3.テレワーク対応はできますか? A3.当初はZOOMやTEAMSが使えませんでしたが、バージョンアップして現在は対応しています。

何だか、「私のトリセツ」の裏版、ダークサイド版の様になってしまいました。こんなものをコミュニケーションツールとして使ったとして、最初は笑っていた上司(年下)が徐々に無表情になる様子が目に浮かびます。まぁ、最悪な例だと思って下さい。それにわざわざこんなもの作るって、何か面倒な奴という感じです。

しかし、私のトリセツを書いてみるというのは、早期退職後に自分の棚卸というか、自分を客観視して眺めるにはよい手だなと思います。結構、楽しいんですよ、これが。
ただ、所詮は「自己認識」なので、「他者からどう見えているか」との間で、甚だしく乖離していることもあります。一番の親友あたりに検証をしてもらうとよいかも知れません。友達を一人失う危険もありますが。
何十年も一緒にいる家族に検証してもらうのは相当に恥ずかしいですよね、無理!です。

次回の「中高年の早退(早期退職)」は一応、これで一段落つけるものとして、「⑦うしろめたさ」というタイトルで、早期退職したものにしか分からない「居心地の悪さ=うしろめたい気持ち」について書いてみます。ではでは。

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