私の作業机の正面に一枚のCDが飾られています。David Patonの「The Search」という2003年に発売されたCDなのですが、透明なケースの内側にあるジャケットに「To おーちゃんパパ(私の名前)」とメッセージが直筆で書かれ、David Patonと署名がされています。これは、David Patonが私宛に自ら(確かスペインから)発送してくれたものなのです。中学生だった私が憧れたポップスターが、自ら私の名前を記してくれた正に宝物のCDなのです。

David Paton(1949~)はスコットランドのポップロックバンド「パイロット」のボーカルでベーシストです。デビット・パットンと当初は呼ばれていましたが、いつからか「デビット・ペイトン」と発音される様になりました。

パイロットは1974年にデビュしたバンドで、「Magic」「January」「Call Me Round」「Get up And Go」といったヒット曲、名曲を残しています。パイロットは今でも、彼らの母国であるスコットランドでは伝説のグループですし、遠く離れた日本でも熱狂的なマニアが数多くいます。パイロットはその楽曲がロックとポップスの丁度中間地点であったために、当時のレコード会社も売り出し方針が定まらない様子で、結局は1977年発表の「Two’s A Crowd」というアルバムを最後に解散してしまいます。

バンドの最大の魅力は何といってもDavid Patonの作り出す楽曲の素晴らしさです。加えて、彼はとてもGood Lookingで、元ベイ・シティ・ローラーズ(大成功前のね)のメンバーでもあります。日本では多くの女性ファンに加え、不思議なことに熱烈な男性のDavidファンも沢山いたのです。
彼の才能はアイドルの枠の中で消費されてしまう様なものではなく、当時のレコード会社もパイロット(David Paton)に多くに期待をしていました。彼らの2枚目のアルバムに「Second Flight」という歴史に残る名盤がありますが、このプロデュースを担当しているのがほぼ同時期にQueenを手掛けていた超大物プロデューサーであるロイ・トーマス・ベイカーなのです。レコード会社の力の入れ方がよく分かります。このアルバムは本当によく「行き届いたアルバム」でA面一曲目からB面の最後の曲まで、After Beatlesの中で最良のポップスを聴くことができます。

また、パイロットと言えば、「ハンド・クラッピング」です。シングルカットされた代表曲においては、恐らくすべての曲で、演奏の合間にパーカッションとして「手拍子」が入るのです。これが気持ちよいのです。きっと当時のコンサート会場では、こぞって皆がこれをしたに違いありません。

David Patonはパイロットの活動を停止した後も本当に長い間、ポップ/ロックの世界で演奏を続けます。Davidはアラン・パーソンズ・プロジェクトに長く参加し、代表作「Eye in the Sky」などでベースを弾き、時にはボーカルも担当しました。また、キャメルというプログレッシブバンドにも参加しています。他にも高名なミュージシャンのレコーディングやバックバンドに数多く参加しています。ベーシストとしての技術が高いのは勿論のこと、きっと彼の人間的な魅力が長きに渡る音楽活動を支えてきたのです。
その間に何枚かのソロアルバムを発表し、世界中にいるファンを喜ばせてきました。私の手元にある「The Sesrch」もその中の一枚なのです。

それでは何故、Davidの直筆、しかも私の名前が入ったCDがここにあるのでしょうか。それは、私が2005年頃?でしょうか、ネットで見つけたブログ記事からスタートする小さな物語なのです。

私と同じくDavid Patonのファンの方が書いた記事には、「The Search」を販売するレコード会社に直接注文すると、彼から直接にサイン入りのCDを送ってもらえることもある と記されていたのです。というのは「The Search」は当時、メジャーなレコード会社からではなく、確かインデペンデントレーベルからリリースされていたのです。CDショップに並べられることなく、ネットで注文が入るとその時点で発送の手続きをした様なのです。それにしても、まさか、David自らがそんな作業に係る訳はないでしょ? と思ってはみたものの、「40年来のファンであるDavid Patonと僅かな一瞬でも接点が持てるのでは?」という乙女な願望を抑えることができず、当時、何だか怪しい海外のサイトでオーダをしたのです。

そして、結構に時間が経ち、オーダしたことも半ば忘れかけた頃に、このCDが私の手元に届いたのです。段ボールの包装を開き、CDを見ると、そこにはDavidの直筆の文字があったのです。その時は、何だか中学生の頃からずっと続いた長い旅が「ここで帰結した」様に思ったのです。ちょっと大げさですね。

どうして急にこのエントリを書いたのか? それは、今が「January」だからです。まぁ、パイロットのヒット曲のタイトルである「January」は女の子の名前ですけれど。

YouTubeに当時のビデオがアップされていました。しばし、宝石の様な1曲をお聴き下さい。(ちょっとDJ風に)パイロット、1975年の全英No.1ヒット曲です、「January」、どうぞ!

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