勤め先からの帰り、電車を降りて駅の構内から一歩外に踏み出すと、夜の街が淡い光に包まれています。駅周辺に植えられている何本もの桜の古木が、今年も見事な花を咲かせました。どんなに開花のニュースを耳にしていても、桜の花の不意打ちに毎年驚かされるのです。カレンダーの日付とは別に「新しい毎日」が始まる様な気分になります。

桜は別れの記憶であり、出会いの記憶です。物心がついてから仕事を畳むまで、ずーっとこの繰り返しです。仕事を畳んだ春だって、これまで気付かなかったものたちと新しい出会いがあるのです。今まで挨拶はしてきたものの誰だか知らなかったお婆さんが「吉田さん」ということを知ったり、玄関先で寝ている猫がお隣りの家の「みーちゃん」だと知ったりするのです。
吉田さん、みーちゃん、よろしくお願いします。

さて、桜に関するエトセトラです。

<日本人の好きな花>
1位 桜(64.6%)、2位 バラ(36.0%)、3位 ひまわり(28.2%)
※出典:日本リサーチセンター あなたが好きな花は?(2019.11)
※候補となる20の花から5つを回答する方式

29才以下、30代、40代、50代、60代以上の各年代で「桜」の圧勝です。特に、50代、60代以上の男性の支持が高いことが目立ちます。これは、中高年が「桜」に特別な思いがあるのか、それとも「大して花の名前を知らないのか」、分析が難しいところです。敢えて、「桜に特別な思いがある」ということにしておいてあげます。まぁ、後は「散るだけ」という点では共通してますけどね。

ちなみに、このアンケートで実は興味深かったのは、女性の50代と60代以上の「4位」にカスミソウが登場することです。カスミソウ、ここに登場する以外は男女&各年代で、5位までに顔を出すことはないのです。50代と60代以上の女性は、脇役ではあっても花束の全体バランスを整える上では欠かせない「カスミソウ」に家族や社会の中での自分の役割を見ているのでしょうか。いえいえ、あなた方は「立派な主役」ですよ。

<花見で飲みたいお酒>
1位 日本酒(52.8%)、2位 果実酒・リキュール(42.5%)、同率3位 チューハイ・サワー、梅酒(30.2%)
※出典:KURAND株式会社 春のイベントに関するアンケート調査(2022.3)
※複数回答

日本の国花である「桜」(菊も)には、日本酒がやはり合いそうです。気分です、気分。普段は「日本酒離れ」が言われていますが、この時ばかりは秘蔵の銘酒の出番です。できれば、お花見も序盤の中に、まだお酒の味が分かる中に登板させましょう、先発でもいいくらいです。昼間からハイテンションで日本酒か、効きそうです。

<花見はどこに行きますか>
近場の桜(60%)
<花見は何人で行きますか>
40代:ひとり(44%)/ふたり(32%)、50代:ひとり(40%)/ふたり(38%)、60代以上:ひとり(34%)/ふたり(48%)
※出典:ウェザーニューズ 「お花見調査2021」(2021.3)

何だかいい感じですね。年をとるにつれ、夫婦で、近くの桜を見に行く様になる。ふたりに大して話題が無くたっていいんです。桜の花を見ながら、ずっと、「キレイだね」って言い続けていれば、それで十分に幸せな時間です。

そうそう、春以外でも私たちは「桜」に出会うことあります。それは映画の「男はつらいよ」ではなく、結婚式の披露宴の「両家控室」で飲む「桜湯」です。桜の塩漬けに白湯を注いだもので、私はこの様な場以外では飲んだことはありません。何でも「お茶」というのは法事などのお別れの際にも飲むものなので、めでたい席では「お茶」は飲まないのだそうです。
湯呑の中に鮮やかに咲く桜の花、Happyな気分に見事な華を添えてくれます。(上手いことを言ってみました)

自分や家族の入学式や卒業式、入社式、そして場合によっては退職の日、思えば、いつも桜の花が咲いていて、花びらが宙を舞っていた様に思えます。本当はそんなことはなくて、冷たい雨がふっていたり、桜が開花していない、または既に散ってしまっていたなんて年もあったハズなのです。けれど、いつの間にか多くの記憶の輪郭が曖昧になっていきます。

そして、いつか、桜吹雪が止んだ後にあたりを見回してみると、もう誰も親しい人がいなくなっているかも知れないのです。これから何回も、何十回も、大好きな人たちと一緒に桜の花を見ることができます様に。

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