「早期退職」に関するエントリ(記事)をこれから何回かに分けて書くことを考えていますが、内容が分かり易い様に「中高年の早退」と共通タイトルを付けます。早退とは勿論、「早期退職」を略したもので、「早引け」のことではありません。けれど、「中高年の早退」、何だか顔色が悪そう、俯いて咳き込む感じ、だけど誰も心配しないというニュアンスがヒシヒシと伝わってきて、よい感じです。自虐的だなぁ。

先週(1/5)のエントリで、エラそうなことを散々書きました。懲りもせず、またエラそうなことを書いてしまいそうです。所詮、ただのおじいさんの戯言なのでご容赦下さい。
前回のエントリでは、早期退職の判断をする際に、当たり前のこととして、「経済的な自立」が最大の検討ポイントであると書きました。しかし、「経済的な自立」が覚束ない状態であっても「リスクを覚悟で新しく踏み出したい」「早期退職が不可避な理由がある(病気、家族の介護など)」状態であれば、早期退職せざるを得ない訳ですが、再就職/転職をする場合にはきちんと「心構え」をもって臨まないと、あっという間にプランが崩壊してしまいます。転職本やネット記事などに溢れかえる「中高年の転職」に関する戦略も戦術も方法論も小賢しいテクニックも大して役に立ちません。それでも転職活動に関しては「精神安定剤」として不安を和らげてくれますので服用しても悪くはありません。ただ、誰も書かないことですが、本当に一番大切なことは「転職先の新しい環境で働き始めてからのこと」なのです。そして、それは多分に「心」の問題なのです。60歳を間近にして、誰一人私を知らない会社で未経験の仕事を始めた私の経験をお話ししたいと思います。

<1>頭が納得していない問題
先ず、早期退職に基づく再就職をする中高年は「強制的な退場:定年退職」とはまったく異なるメンタルのまま、新しい環境に放り出されます。自分で早期退職を決めたにも関わらず「100%の納得」が頭の中で得られていないということなのです。何かイヤなこと/戸惑うことがあると、それが例え、猫のひたい程のことであっても、「早期退職をしなければよかったかな」という比較のスイッチが入ってしまうのです。(猫のひたいは本当に狭い、大切な知識です) 要は、まだ十分に枯れていないという訳です。気を付けねばなりません。中高年は自滅する生き物なのです。
<2>自分の労働観が揺らぐ問題
次に、自らの労働観の転換が迫られます。再就職した際の中高年の仕事の多くには「出世もなければ、競争もありません」。求められるのは与えられた仕事をきちんとこなすことだけです。あれ程自分を苦しめてきたものが、今はその喪失感に苦しめられます。本当にバカげた話です。また、自分は部長だった、30人の部下がいた、といった前の会社の中での成功がその人の人格(プライド)を支えていた場合、これが瞬間で崩壊します。私の場合は幸いにも、そもそも前の会社で褒められる様なこともしておらず、傷つくようなプライドもなかったことから、この部分は素通りでした。また、前の会社で「自分の実力」と思っていたことは、ほぼすべて「会社の実力」です。一つの箱庭で使えた能力は、別の箱庭では使えません。
<3>給与問題
最後に給与です。これは、この国の雇用慣行を理解すると「納得」できるので、それ程厄介ではありません。日本型雇用慣行(終身雇用、年功序列、企業別労働組合)では若い頃の給料は「後払い」方式になっていて、若い頃の給料は抑えられる一方で、中高年は第一線から退いた後も会社への実際の貢献度以上に報酬が支払われます。従って、「あのオジサン、給料もらい過ぎだよ」という若い社員の怨嗟の声には、凹んだり、びくびくしたりせずに静かに聞き流せばよいのです。このことで、中高年の給与が大幅に減らされることがあれば、中高年は若い頃の不当に安い給与の再請求を会社にすべきです。また一方で、会社が年功序列を廃止するのであれば、今の若い人たちは「いつもでも昇給しない」ことも覚悟をしなければなりません。つまり、「先払い」と「後払い」、報酬の支払いの方法が違うだけなのです。どちらが優秀な社員を採用できるか、従業員の納得性が高いか、人件費のポートフォリオとして会社にとって都合がよいかの違いです。よって、中高年が再就職をした場合、例え正社員としての採用であっても、余程の実力があれば別ですが、転職先の会社から「後払い」部分をもらえる訳がありません。あなたの新しい仕事が「安い仕事」だからではないのです。すべての仕事は等しく尊いのです。(除:犯罪のお仕事) 後払いが乗っていないのです。ね、少し納得したでしょ。逆に言えば、早期退職割増金などの制度があった場合、これは「後払い」の一括払いと考えることができそうです。よく考えねばなりません。尚、最近よく耳にする「同一労働同一賃金」が現実のものとなれば、正規/非正規に報酬の差が付けられなくなり、給与面での「正規」の既得権益は失われます。そこでは今以上に「若い人」が優先されるのは当然であり、中高年の再雇用はさらに狭き門、さらに仕事内容が限定されることになります。
<おまけ>みんな知らない人問題
コネ、ツテを頼らない再就職の場合、最初は「だれも知り合いがいない」ということになります。転職慣れしている人ならいざ知らず、「中高年での初転職」の場合、これが最初に喰らうジャブです。「中高年での転職が上手くいかない理由」はこれが一番大きいのかも知れません。私の場合は自らが厚顔無恥であること、新しい職場が暖かく迎えてくれたことから、ほとんど気になりませんでした。

他人のことは分かりませんが、私はこれらのことがごちゃ混ぜになって、4月の入社からしばらくの間、実はついこの間までは、きちんとした整理がつきませんでした。格好いいことを言っていても、人の心はそんなに簡単には切り替わらないのです。今でこそ「自由に生きて、必要なだけ働く」が板についてきましたけれど。
「中高年の早退」の次回は「②ハローワーク/職業訓練」に関して、書いてみます。具体的な求人応募もする前から、結構、頭の中では不安が募っていたんですよ、あの頃は。真冬で寒かったし。

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